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企業訪問

ハドソン靴店

若手職人の技術研鑽の場に

2016/07/11

横浜の信頼できる靴職人

「横浜に凄腕の靴職人がいる」と、ネットで評判になり、メディアでも紹介されたハドソン靴店の村上塁氏。「まいぷれ」でも神奈川区のマエストロとして取り上げてほしいとの声もあり、ほかのメディアと違う切り口で企業訪問させていただいた。

反町駅から徒歩5分、松本3丁目商店街の一角に位置するハドソン靴店は1961年の創業。今年で55年になる。オーナーの村上塁氏は2011年5月に先代の店を事業継承した。


先代の佐藤正利氏は村上氏の師匠。村上氏は3人の師から製靴技術を教わっているが、佐藤氏は2人目の師。佐藤氏は吉田茂元首相、石原裕次郎など著名人の靴を作り上げ、多くの受賞歴のある横浜唯一の靴職人として知られていたが、2009年に亡くなり、それから1年、線香をあげるため師匠宅を訪れた村上氏に、奥様から店を継がないかとの話が出たことから、現店舗を継ぐことになった。

しかし先代が亡くなって1年半、「その間、店のシャッターを下ろしていたため、かつてのお客様は簡単には戻ってきませんでした」と村上氏。

最初の頃は、1ヶ月の利益が数千円、それから2、3年は月数万円という状況が続いた。

「横浜に部屋を借りたかったが、家賃を払えるような収入ではないので、埼玉県浦和の実家から通っています」

口コミで広がる評判

店を継いで5年、その間に、商店街は廃業やシャッターを下ろしたままの店舗が目立つようになったが、ハドソン靴店のお客様は着実に増えていった。

周辺にフランチャイズの靴修理店ができた。そういう店の一部は脱サラで靴修理の店を始めるが、下積み経験がないため難しい修理は受けないので、そういう修理がハドソン靴店に持ち込まれる。しかも、腕もよいとの評判が口コミで広がり、北海道から四国、九州まで全国から修理の依頼が来るようになった。
「私の下積み時代の賃金は、満足に生活できるような額ではなかった。ですから靴職人としての目的を聞かれたら、迷わず稼ぐことと言います。稼げる靴職人でなければ人材も育たないし、誇れる職業とは言えません」。

日本にはマイスター制度も国家資格もない。「専門学校を出て業界に入っても、夢と現実のギャップから辞めていく人は多い。これでは若い職人は育ちません。ここを若手職人育成・技術伝承の場にしていければと考えています」と語る。

日々の手入れが重要

靴の選び方について聞いた。

「新しい靴を選ぶとき、ほとんどの人が靴先の形状、デザインを重視し、靴底は見ない。だが靴底の層はよく見た方がよい」と村上氏は言う。皮革でないもの(紙など)を使っている場合もあり、「修理の時に交換しておくと、履き心地が違うことに気づかれますね」と語る。
靴の手入れについて。

「靴の手入れは重要です。靴の上の部分は日々の手入れがものをいいます。出掛けるときと帰宅してからのブラシ掛けだけでも違います。週に1回はクリームで手入れをしていただきたいですね。できれば4~5足用意して、TPOで使い分けると靴が長持ちします」。

この仕事の面白さについて。

「靴職人は、切る、削る、貼る、縫うといった造型要素が多い。皮包丁を使いますから砥石も使いこなせなければなりません。そういう意味では靴職人は面白く、飽きない職業です」。

受付は靴の問診

ハドソン靴店は「受付時に、ご要望に適した素材選び、修理方法、修理後の耐久性を考えてお客様とお話しさせていただいています」。

靴修理に使うソールの素材では、軟らかい素材か、硬い素材か。合わない素材を選ぶと履き心地が悪くなったり、健康に影響が出たり、すり減りが早くなり、間もなく再度修理に出すことになりかねない。病院の問診のような相談による修理が信頼につながっている。
ところで店名の由来が気になる。

「先代の命名なので、私も確かなことは知らないのですが、多分ハンドソーン(手縫い)からきていると思います」

最後に、今後の計画を聞いた。

「店舗を増やすより、1つの拠点を大きくしていきたい。そして若い人が安心して食べていけるだけのお店にしたい。若い人を育てるのは私の重要な使命です」。
ハドソン靴店  
所在地 横浜市神奈川区松本町3-26-3
電話 045-628-9496
営業時間 12時~20時(月曜のみ18時閉店)
定休日 火曜、第2・4水曜
HP ハドソン靴店